NHK財団『インフォメーション・ヘルスAWARD』表彰式

その他としては、表彰者と審査員のやり取りだけでなく、会場参加者との質疑応答などがあってもよいのではと感じました。

雑感を3つほど、あげてみます。

アイデア部門準グランプリ「体験学習型の詐欺対策/絶対払わないけれど、騙されるだけ騙されてみた」について、です。
体験学習は法律や経営を学ぶ際、修羅場の疑似体験としてのケースメソッドがあります。それに類するアイデアだと思います。

ただ、受賞アイデアは実際の現場を体験させるというもので、体験者側にさまざまなリスクがあるのではないかと感じました。特に対象者が中学生、高校生と設定されているため、精緻な戦略が必要ではないでしょうか。
あくまでもアイデア部門ではありますので、これをそのまま実現するということではないにせよ、詐欺者(交渉先)との情報の非対称性が際立つと考えます。つまり体験者にとっては不利な状況が前提となります。一時的に利用可能な架空の個人情報(メールアドレスや電話番号)を準備し、詐欺者とのやり取りをシミュレートするとはいえ、です。

詐欺者はプロとしてあらゆる手立てを駆使して詐欺を働きかけます。その件数も数知れません。既に生きた学習を経て、ダブルループのような形で詐欺の手段に落とし込んでいる可能性があります。それに比べ、たまたま交渉する体験者が交渉窓口に出向き、単なる体験だけで終えることができるのか。不安はあります。

某経済評論家が同様のやり取りをテレビで公開していましたが、ご本人いわく、「自分はプロだからできます。一般の方はリスクがあるのでやらないでください」と注釈がつけられていました。
このような話が審査の過程でどのように議論されたのかは知りたいですね。審査員の方のコメントにもありませんでした。

もうひとつ。
受賞者から審査員への質問の際、無回答がありました。これはなんらかの回答があってしかるべきではないでしょうか。
アルゴリズムに紐づいてしまうような質問だったと記憶しています。
IT企業の方が呉越同舟で審査されている以上、触れられたくない部分であるのは間違いないでしょう。
ただ、本アワードは公益事業として設けられているのですから、なんらかコメントが欲しかったですね。審査員全員が無言というのはなんとも寂しい光景でした。

最後に。
審査員のどなたかが、取材と発信プロセスの明確化のお話をされていました。情報流通のトレーサビリティだと思います。これには大きくうなずきました。アイデア部門グランプリの「誰が言っているか」に通ずるものがあります。
コモディティの多くがトレーサビリティを実現しつつあるなか、コンテンツに関しても同様ですよね。

以上です。とても楽しい時間でした。NHK財団様、ありがとうございました。

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